かくいうもの

いつでもきょうがいちばんたのしいひ

いい映画を見ると人生が2.5倍ぐらい楽しくなる。

今日は自転車の話でもなく、写真の話でもないです。ここは今日から映画ブログになります。嘘です。2.5倍っていうのは適当です。もともと人生はそれなりに楽しんでるつもりですが、いい映画に出会う度に楽しさレベルが上がっている気がする。ただ、10倍とかだと嘘っぽい。でも2倍以上にはなってるだろ、っていいうことでの2.5倍。はい、それだけです。さて。


いい映画に出会った。それも2本立て続けに。


北野武ソナチネを見て衝撃を受け北野ワールドに陶酔した10代があったり、ラース・フォン・トリアーの映画を見て初めて絶望の意味を知ったり、ガイ・リッチーダーレン・アロノフスキーポール・トーマス・アンダーソン、お決まりのコーエン兄弟、などなど多感なお年ごろの映画少年らしいところは大体通ってきたつもりだったけど、いわゆる「古き良き」については、ほとんどノータッチ。一時期サム・ペキンパー辺りが気になってたぐらいか。たぶん自分自身ではそっちには手を付けないでいたかも知れない、と思う。今回この出会いを授けてくれたのは、またしても登場の「クライアントのおっちゃん」だ。もうすぐ定年の課長補佐。この夏の一ヶ月の電気代が1000円ちょいだったらしい。で、PCもテレビもない、スマフォは買ったけど電波がないので使えない、という生活なのに、またいい情報を仕入れたのだった。それが今回の出会いだったのだ。いやあ、素晴らしい。人生を楽しくするのは人との出会いであるというのを実感する出来事だった。


1975年と1978年。どちらも俺は世界に誕生していない。1975年はロバート・アルトマンが「ナッシュビル」を撮った年であり、1978年はテレンス・マリックが「天国の日々」を撮った年である。名作と呼ばれている(らしい。知らなかった)この2本が新宿武蔵野館で連続上映と聞いて、駆けつけたのだった。ナッシュビルの上映は終ってしまっているが今は「天国の日々」を上映中。全力でオススメできる作品なので、是非。以下それぞれの感想。


ロバート・アルトマンナッシュビル

群像劇はこうあるべき、というお手本のような作品。24人もの登場人物が居るのに、全く説明はない、それぞれのシーンがバラバラに描かれていくのに、混乱することはないし、すんなり映画の内容が脳に溶け込んでいく。他の人が同じ事をやろうとしてもまず出来無いだろうな、という神業レベル。グランド・ホテル形式だとどうしてもごちゃごちゃしたり、コイツ誰だ?ってなってしまいがちなのに、それがなく、個々のキャラクターをしっかりと、過度な演出はせずに、描き分けている。多すぎることも無く少なすぎることもない、という絶妙のバランス。そしてユーモアなど交えつつ、結末へ向けた本流の流れと細かいエピソードの集合体。見終わった後に思わず「おーーーー!」と(声は出さなかったけど)客席で唸ったほど。翌日教えてくれたおっちゃんに即報告に行って、ひとしきり盛り上がった。映画というものはこうあるべき、とついつい語りたくなってしまうような、素晴らしき映画。エクセレントムービー。なんとこの作品は巨匠ロバート・アルトマン(名前は知ってた)にもかかわらずDVD化されてない(日本公開されたときも3週間で打ち切りされた。輸入盤ならあるっぽい@amazon)らしく、観たいと思っていても観れなかった人が多数いた模様。実際俺が観に行った日も、ほぼ満席に近い客の入りで、好評に付き上映期間延長!という扱いだった。そういう他人の評価はまあ、いいとして、とにかく、素晴らしい映画だった。映画館でしか見れないっていうのがまた余計に心踊らす。

Nashville [DVD] [Import]

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テレンス・マリック天国の日々

こちらも巨匠。寡黙な巨匠と言われるほど作品が少なく、40年ぐらいで5作!というから驚きだ。俺自身も「シン・レッド・ライン」を当時平塚の劇場で見た以来なので、2回目。というか「シン・レッド・ライン」の前の作品がこれだからびっくり。20年空いてるとか。一回引退して、復帰したっていうほうがいいレベルというかそれ以上。
この映画はなんといっても映像の美しさ。夕方のシーンはマジックアワー*1だけで撮影されたというから驚く。そりゃ美しいはずだ。それ以外でも自然光に拘って撮影してるだけのことはあり、前編に渡ってため息が出るほどに美しい映像。ブルック・アダムスの演技が素晴らしく、その美しさと切なさには、観ているこちらも農場主同じく心惹かれてしまった。麦が黄金に輝き揺れる光景、燃え上がる炎、太陽の光、影、世界の美しさをコレでもかと見せつけられる。そして残酷さも。魅了された。

天国の日々 [DVD]

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天国の日々 - Wikipedia



こんなにいい映画を見れて幸せ。それも2本も。



今は新宿武蔵野館での上映ですが、このあと吉祥寺のバウスシアターでも上映される見たいなので是非。どっちも1週間ずつのようなので、お見逃しなく。


ZIGGY FILMS 70's「ナッシュビル」「天国の日々」

http://www.baustheater.com/
新宿武蔵野館

*1:日没後20分程度の最も光の美しいと言われる時間帯