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かくいうもの

いつでもきょうがいちばんたのしいひ

園子温監督作『恋の罪』を観た。


ネタバレします。アメブロばりに改行入れときますんで読みたくない人はスルーで。気になる人はどーぞ。







ようこそ、愛の地獄へ

前作「冷たい熱帯魚」で猛毒エンターテインメントを魅せつけた園子温。その最新作公開とあらば劇場に駆けつけねば。
ということでテアトル新宿で観てきました。昼間にチケット購入して夜の上映時間までブラブラしてたんだけど、ワクワク感が堪らなくてもう待ちきれなかった。完全に毒されてます。


一言で言えば、人間を抉る、というのがこの園子温の魅力であるのだが、今作もまたそうであった。
猟奇的な殺人事件をベースに堕ちていく女性の渾身の叫びが渇いたユーモアを交えながら展開されていく。
今や園子温のミューズとなった神楽坂恵と妖艶たる魅力を遺憾なく発揮する冨樫真、セックス、不倫、デリヘル、城へと辿り着くには。。
言葉には「カラダ」という「意味」が必要。そしてその意味を手に入れるために狂気の世界に踏み込んでいく女たち。美しいほどに絶望的。


水野美紀演じる刑事は、夫と娘をもち幸せな家庭を持つ。冨樫真は有名大学の助教授、神楽坂恵は小説家の妻。それぞれに一見幸せな生活を送ったいわゆる勝ち組であるが、生への渇望、いや性への渇望から、奴隷的な関係やデリヘル嬢としての顔など、そんなにも生きるが苦しいのか、そうではなくてそれが快楽なのか。まるで自己消滅を臨むかのように欲望に生きていく。セックスと狂気。思わず笑ってしまうほどに大胆で同時に苦々しく。切ない。

あいからず死体の造形はチープ(褒めてる)し、極端なほどに残酷性を描いているんだけど、この監督の場合ここは笑っていいところだと自己解釈している。チープさはこれがフィクションであり、物語であり、詩であることを保っていると思う。そんなところよりも、やっぱりこの監督がうまいのは「ムカつく」やつをとことんムカつくように描くところ。今回で言えば水野の愛人の児島一哉、神楽坂の夫で小説家役の津田寛治。ほんとにこいつぶっ飛ばしてやろうかというぐらいに嫌な奴らを捩じ込んで来る。あと瞳への拘り。これ俺が勝手にそう思ってるだけかもしれないけど、眼の描き方に拘りがあると思ってる。「冷たい熱帯魚」のラストの光を失った眼球もゾクゾクするほど美しかったけど、今回の生きる楽しみを感じられない熱のない女の眼球もまた鳥肌が立つほど美しかった。俺が過剰に受け取ってるだけだろうか。もしかして眼球フェチ?いやいや。


秀逸なシーンを2つ。
一つ目は。鏡の前で全裸で試食販売の練習をするシーン。セックスで心の枷を外した女のはじけていく様が素晴らしい。つか演技凄い。
笑ってしまうシーンなんだけど、次第に鳥肌たつシーンに様変わりした。
もう一つは冨樫家での母親とのティータイム。間の絶妙さと不条理な会話。こちらもユーモアからの流れるような狂気。余計に浮き立つ。
是非にとも観て欲しい。



劇中、冨樫の授業風景で、詩が読まれる。

言葉なんか覚えるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる

田村隆一「帰途」

詩人からの伝言 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

詩人からの伝言 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

言葉の意味を知らなければ、あなたの涙の意味が分からずに悲しむこともない。


渋谷円山町のラブホテルという「城」をめぐる狂ったほどに愛おしく、残酷で、生きることに渇望した女たちの映画。
いい映画だった。なんつーか、パワフル?すんごいエネルギーのある映画。


最後に一つだけ言っておきたいんだが、それも今まで書いたこと全否定する勢いで言いますけど、
この映画はラストの水野美紀が走るシーンを撮りたいが為に作った作品である。ぶっちゃけそれ以外に水野美紀の存在意義はなかった。
でもって、絶対水野美紀だったら追いつけんだろって全力でツッコミを入れてました。俺がこの監督を好きな所以はこういうところでもある。
同行者とも完全に意見が一致してたので、100%間違いない。


来年には『ヒミズ』の公開が予定されていて期待度はさらに上がる。まさに今絶好調の園子温。次回のヒミズは全国ロードショー。新宿ではバルト9で公開しちゃうっていうのは大丈夫なの? いいの?


http://www.koi-tumi.com/index.html
テアトル新宿 | テアトルシネマグループ

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園子温 - Wikipedia

2012.7.3(tue)ブルーレイ&DVD発売! 映画『ヒミズ』公式サイト


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