かくいうもの

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美しすぎる狂気「ブラック・スワン」

ネタバレ。

男なら誰しもが一度はナタリー・ポートマンに恋焦がれたわけで、彼女は何時まで経っても少女であるはずだったのに、いつの間にこんなに美しい女性になっていたのだ。という、切なさと喜びと、深まる愛。そして狂気。

苦悩する顔フェチの俺としては、この映画は最高のご褒美、とか思ってたら怖い怖い。いわゆるホラー的な演出もあり、B級っぽい作りをしながら、精神を蝕まれていく狂気の世界を浮き彫りにしていく。皮を剥ぐような痛覚への刺激と、振り向いたらド━(゚Д゚)━ン!!的なベタベタな演出に加え、こいつ壊れてやがるという人間を見つめさせる描写。最後のが一番怖い。狂気の世界と現実世界の区別がつかなくなるほど、怖い。特に背筋凍るほど怖かったのは、ラスト近くで、自分の体を傷つけていた事に気づいて涙を流しながらも、鏡を見て化粧を始めた途端、ころっと表情が変わるところ。ゾクゾクするとかそういうレベルを遥かに超えたところで、まるで何か強大な力で座席に押し付けられてしまって、心臓を鷲掴みにされたかのような。


もう、ナタリー・ポートマンを絶賛するしかない。苦悩苦悩苦悩苦悩笑顔一瞬苦悩苦悩苦悩。
静かに、そして途方も無いところまで落ちていく。心の闇はあまりにも深く、暗く、希望を全て食い尽くしていく。そうやって食いつくされた結果、異型の物に変容していく絶望に満ちていて、そんなの見せつけられたらそりゃ当然のように首のあたりがひきつっている。最後の観客の声を聞いた彼女は幸せだったのだろうと願いたい。特別な何かで狂っていくわけではなく、とても有りがちなところで狂っていくのが、この映画の凄いところで、それをしっかりと現出させた女優に賞賛を。演技、っていうんじゃなかったもんな。存在。


美しい狂気は、震えるほどに愛おしい。

http://movies2.foxjapan.com/blackswan/
ブラック・スワン : 作品情報 - 映画.com

キャスト: ナタリー・ポートマン、バンサン・カッセル、ミラ・クニスバーバラ・ハーシーウィノナ・ライダー
監督: ダーレン・アロノフスキー