かくいうもの

いつでもきょうがいちばんたのしいひ

父眠る

2021年11月。父、永眠。78歳だった。

朝はいつも通り起きて雨戸も自分で開けたらしい。でもいつの間にか亡くなっていた。ずっと高血圧で最近は病院通いだったらしいけど最後までピースを吸っていた。両切りのピース。昔はいつもテーブルにピー缶があったなあ。

疎遠だった。一方的に私が嫌っていた。きっかけは自分が中学生のころのほんの些細なことだったけどそれをずっと引きずっていた。それだけでは無いいろいろなことがあったりして、二十歳のころ一人暮らしを始めて以降は、たまに実家に帰って顔を合わせてもろくに会話もしてなかった。俺が今42だから、たぶん20年以上まともな会話ができてなかった。できてなかったままで終わってしまった。

好きなものは、たばこ、お酒も好きだったけど体を壊してからはどうだったんだろう。コーヒーも好きだった。コーヒーマシンが昔あったな。今回葬儀のために実家に戻ってきたらマンデリンの豆があった。家族は他にだれもコーヒー淹れて飲まないそうなので、もらって帰ることにしようか。これがずっと好きだったのだろうか。コーヒーの好みを聞いたことも無かったな。
ボランティアにも力をいれていて、昔「ひまわり号」という障がい者用の臨時列車を運行するのを支援していたのをよく覚えている。
今回本人の机を整理していて私は初めて知ったのだが、3.11の後も東北には頻繁にボランティアに行っていたらしい。そういうことも知らなかった。家族は当然知っていたのだけど。最近もボランティアのようなことは続けていたようだ。

何を語るにしても、曖昧で肉親なのに知らないことが多すぎる。父の机も初めて見たのだが、子の誰かの勉強机のおさがりだ。最近はこまめにfacebookを更新していたらしい。スマホを開いてみると、ほぼ毎日写真をあげていた。父の机の横の窓から見える富士山だった。隣の屋根に隠れてちょこんとしか顔を出していないけど、富士山だ。老いてしまった父にはその窓からの見えるものが楽しみの一つだったのだろうか。他には花の写真などもあるし結構コメントやいいねもついている。遡っていくと私などよりよっぽど親しい人が多いようだった。「よかった」とは上から目線だけど。ありがたいと思ってしまった。

パソコンの整理をしていたらピクチャのフォルダに「孫」のフォルダ。ただし中身は空っぽだった。


そうだよなあ、孫の写真保存したかったよなあ。会いたかったよなあ。抱きたかったよなあ。と思うと涙が止まらんかった。
どうやら妹に送ってたい写真をスマホには転送してもらっていたらしい。ちゃんとスマホには保存されてた。
写真だけは見てくれていた。本当に、本当に良かった。


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42年前の父と私。子どもが生まれて親はうれしくて当然だよなあ。自分に子どもができるまで気づけないの愚かすぎるよな。
一緒に酒とか飲みたかったんだろうなあ。遅すぎるけど、ごめん親父。ありがとう。安らかに。




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今日の朝はすごく天気が良くて、父が好きだった富士山は雪を被って美しかった。